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積算評価と収益還元評価の本当のバランス | 中級者が知る金融機関の評価ロジック

【1棟アパート投資実践戦略シリーズ 第2回/全7回】積算評価と収益還元評価の本当のバランス | 中級者が知る金融機関の評価ロジック

はじめに

「この物件、積算評価はどのくらい出ますか?」――ある程度経験を積んだ中級者になると、物件資料を見た瞬間にこの問いが頭に浮かぶようになりますよね。どれだけ収益性が高い魅力的な物件であっても、融資が引けなければ取得することができないからです。ただ、積算評価ばかりを追い求めた結果、「担保評価は高いけれど、実際にはあまりキャッシュが回らない物件」を掴んでしまい、苦労されている投資家の方も少なくありません。

第2回のテーマは、不動産投資融資の土台となる「評価」です。積算評価と収益還元評価という2つの物差しがどのように計算され、金融機関がどちらに比重を置き、エリアによってどう使い分けるべきなのか。評価のロジックを理解することは、「買える物件」と「買えない物件」を事前に見極め、アプローチすべき金融機関を正しく選ぶ力に直結します。

積算評価はどのように計算されるのか

結論からお伝えしますと、積算評価はあくまで「担保価値」であって、物件の「収益力」を表すものではありません。この違いを切り分けることが、評価戦略の大切な出発点になります。

積算評価は、土地と建物をそれぞれ分けて算出します。土地は原則として路線価(または相続税評価額)に土地面積を掛けて計算します。エリアによっては、公示地価や実勢の取引事例が加味されることもあります。建物は再調達価格(今、その建物をまったく同じ条件で新築したらいくらかかるか)に、残存年数÷法定耐用年数を掛けて算出します。

ここで、構造ごとの法定耐用年数をおさらいしておきましょう。木造は22年、軽量鉄骨は27年、重量鉄骨は34年、RC(鉄筋コンクリート)は47年です。再調達価格の単価目安は、地域によって差がありますが、木造で㎡あたり15〜18万円、鉄骨で18〜22万円、RCで20〜25万円程度と言われています。

構造別の特徴を分かりやすく一覧にまとめましたので、参考にしてみてください。

構造法定耐用年数再調達価格(1㎡あたり目安)
木造22年15万 〜 18万円
軽量鉄骨27年18万 〜 22万円
重量鉄骨34年18万 〜 22万円
RC(鉄筋コンクリート)47年20万 〜 25万円

たとえば、RC造・築20年・延床面積500㎡の物件であれば、建物の再調達価格は約1.1億円となります。残存年数27年÷耐用年数47年で残価率は約57%となるため、建物分の積算評価は約6,300万円になります。これに土地の積算評価を足したものが、その物件の総合的な担保評価となります。物件価格に対して、この積算評価がどれくらい出るかが、融資の通りやすさを大きく左右することになります。

収益還元評価という、もう一つの物差し

積算評価が「その物自体にいくらの価値があるか」を見るのに対し、収益還元評価は「その物件がいくら稼ぎ出してくれるか」に注目します。代表的な手法が直接還元法で、年間の純営業収益(NOI)を還元利回り(キャップレート)で割って評価額を算出します。

たとえばNOIが600万円で、そのエリアや築年数における還元利回りが7%と設定されている場合、収益還元評価は約8,570万円になります。たとえNOIが同じであっても、賃貸需要の強いエリアでは還元利回りが低く設定されるため評価額が上がり、需要の弱いエリアでは還元利回りが高く設定されるため評価額が下がることになります。より精緻な「DCF法」では、保有期間中のキャッシュフローと将来の売却価格を、現在の価値に割り引いて細かく計算します。

スルガ銀行の問題以降、この収益還元評価を重視する金融機関はとても増えました。物件そのものの稼ぐ力を融資の根拠とする流れですが、地方銀行や信用金庫の多くは、依然として積算評価を担保の土台として大切にしています。ここで重要なのは、どちらの物差しに比重を置くかによって、同じ物件であっても評価額が大きく変わってくるという事実です。

「積算7割以上」は絶対的な合格ラインではありません

不動産投資の世界ではよく「積算評価が物件価格の7割以上ないと融資が出ない」と言われることがあります。しかしこれは絶対的な合格ラインではなく、あくまで目安のひとつにすぎません。

ご自身の属性(年収や資産背景など)が強く、収益還元での評価がしっかりと立つ物件であれば、積算が6割程度であっても長期の融資が承認されることはあります。逆に、積算評価が10割(物件価格と同等)出ていたとしても、エリアの賃貸需要が弱く、収益還元評価の面で厳しく減点されてしまえば、融資が伸びないこともあります。つまり積算評価と収益還元評価は、どちらか一方だけを追うのではなく、両輪としてバランスよく評価されることが大切なのですね。

経験の浅い方がやってしまいがちな失敗として、積算評価を伸ばしたいばかりに、土地値の安定した地方や郊外の物件ばかりを追い求め、結果として賃貸需要の薄いエリアで空室リスクを抱え込んでしまうケースがあります。積算評価が高い物件は、次の物件を購入する際の共同担保として大いに役立ってくれますが、日々の運営が回らなければ本末転倒です。担保価値と収益力のバランスをうまく取ることが、評価戦略の核心となります。

都市部と地方で異なる「効く物差し」の使い分け

「都市部では収益還元評価が効きやすく、地方では積算評価が効きやすい」という特徴があります。これは評価のロジックから自然と導き出すことができます。

都心近郊の物件は土地の価値が高いため、積算評価が出やすい傾向があります。その一方で物件価格も高くなるため利回りは低くなりやすく、収益還元評価の面では数字が伸びにくくなります。逆に地方の物件は、土地の平米単価が安いため積算評価は出にくいですが、利回りが高く設定されていることが多いため、収益還元評価の面ではしっかりとした数字が立ちやすくなります。

つまり、同じ投資家の方が同じ予算を持って動くとしても、「都市近郊の収益力が高い物件は収益還元を重視する金融機関へ持ち込む」「土地値がしっかり出る地方の物件は積算を重視する信用金庫へ持ち込む」というように、物件の性質に合わせて金融機関を選ぶことで、それぞれの評価を最大限に引き出すことができます。この「評価の出し分け」を意識できるようになると、融資をスムーズに伸ばしていけるようになります。

具体的には、そのエリアの還元利回りの相場観や、金融機関が直近で融資を行った事例、ご自身の決算内容を踏まえながら、物件ごとに最適な持ち込み先をパズルのように組み合わせていきます。物件と金融機関の組み合わせそのものが、立派な戦略になる時代なのですね。

共同担保と評価の積み上げ

積算評価が物件価格を上回る、いわゆる「積算超過」の物件は、その超過した価値の分を、次に新しい物件を取得する際の「共同担保」として活用することができます。これは、どんどん規模を拡大していきたい中級者にとって非常に心強い武器になります。

たとえば、積算評価が1.2億円ある物件を1億円で取得できたとすると、差額の2,000万円分があなたの「担保余力」として残ります。これを次の物件を購入する際のフルローン化に利用したり、自己資金を温存するために活用したりできるのです。ただし、共同担保をたくさん設定しすぎると、物件同士が書類上で紐づいてしまい、将来1棟だけを単体で売却したいときに手続きが複雑になるという側面もあります。「出口の自由度と引き換えに融資を伸ばしている」という意識を、頭の片隅に持っておくと安心です。

まとめ

  • 積算評価は担保価値、収益還元評価は収益力(稼ぐ力)を表しており、この両輪のバランスで融資額が決まります。
  • 構造別の耐用年数と再調達価格の目安を知っておくことで、大まかな積算評価は自分でも計算できるようになります。
  • 「積算7割」という言葉は絶対的な基準ではなく、ご自身の属性や物件のエリアによって柔軟に動くものです]。
  • 都市部は収益還元、地方は積算評価が効きやすいため、物件の特性に合わせて金融機関を上手に使い分けることが大切です。

無事に評価が出て融資が引けたとして、では手元に現金が残ればそれだけで資産は順調に増えていると言えるのでしょうか。次回・第3回では、キャッシュフローの罠と、それを超える大切な視点である「BS思考」について詳しく掘り下げていきます[cite: 1]。

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