「高齢の方から入居の申し込みがあったが、断るべきか迷っている」「空室が続いているので、入居者の幅を広げたい」——こうした大家さんのお悩みに役立つのが居住支援の仕組みです。単身の高齢者は今後も増えていくとみられています。高齢者の入居をためらう理由の多くは、「何かあったときにどうするか」という不安です。この記事では、その不安ごとに使える対策と、居住支援法人と連携して貸すための手順を解説します(情報は2026年11月時点のものです)。
大家さんが高齢者への賃貸をためらう3つの不安
- 入居中の異変・孤独死:体調の急変に気づけず、発見が遅れることへの不安
- 家賃の滞納:収入が年金のみの場合や、保証人がいない場合の不安
- 亡くなった後の手続き:相続人がわからない、残置物を処分できない、契約を解除できないといった不安
2025年10月に施行された改正住宅セーフティネット法では、この3つの不安それぞれに対応する仕組みが整えられました。
不安ごとの対策
| 不安 | 使える仕組み | 内容 |
|---|---|---|
| 入居中の異変 | 居住サポート住宅、居住支援法人の見守りサービス | ICT機器などによる安否確認、訪問による見守り、福祉サービスへのつなぎ |
| 家賃の滞納 | 認定家賃債務保証業者 | 居住サポート住宅の入居者の保証を原則断らず、緊急連絡先を法人でも可とする保証業者を国が認定 |
| 亡くなった後の手続き | 残置物処理の委任、終身建物賃貸借 | 居住支援法人等が残置物の処理を担う委任契約/入居者の死亡で契約が終了する賃貸借 |
見守りで「気づけない」をなくす
居住支援法人と連携すると、入居者の日常の安否確認や定期的な訪問を任せることができます。さらに、住宅を居住サポート住宅として市区町村等の認定を受ければ、見守りと福祉サービスへのつなぎが制度として提供される住宅になります。
残置物と契約の問題を入居時に解決しておく
国土交通省と法務省は「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を公表しています。入居時に、入居者と受任者(推定相続人、または居住支援法人・管理業者などの第三者)の間で委任契約を結んでおくことで、入居者が亡くなった後の契約解除や残置物の処理をスムーズに進められます。改正法により、居住支援法人が受任者としてこの業務を行えることが明確になりました。
また、入居者の死亡で契約が終了する終身建物賃貸借も、認可が住宅ごとから事業者単位に簡素化され、利用しやすくなっています。
居住支援を活用するメリット
- 入居者の幅が広がる:高齢者・障害のある方・子育て世帯など、これまで受け入れを迷っていた層も対象にできます。
- 長期入居が期待できる:一般に高齢の入居者は転居の頻度が低く、長く住んでもらえる傾向があるといわれています。
- 改修費の補助を受けられる場合がある:セーフティネット住宅や居住サポート住宅として登録・認定すると、バリアフリー改修などの費用に補助を受けられる場合があります。
改修費補助の内容は、国の直接補助と自治体の補助で異なり、年度によって変わることがあります。工事の前に、自治体の窓口で最新の補助要件をご確認ください。
空室対策全般については不動産投資における空室対策の記事もあわせてご覧ください。
始めるための4つのステップ
- 管理会社に相談する:管理会社が居住支援法人や保証業者と連携しているかを確認します。
- 居住支援法人を探す:都道府県が公表している居住支援法人の一覧から、物件のエリアに対応している法人を探し、提供しているサービスと費用を確認します。
- 契約の仕組みを整える:保証業者の利用、残置物処理の委任契約、見守りサービスの内容を決め、賃貸借契約に反映します。
- 登録・認定を検討する:必要に応じて、セーフティネット住宅の登録や居住サポート住宅の認定を自治体に申請します。
注意しておきたいこと
- 見守りサービスや残置物処理には費用がかかる場合があり、誰が負担するかを事前に決めておく必要があります。
- 居住支援法人は法人ごとに対応エリア・支援対象・サービス内容が異なります。
- 見守りがあっても、すべてのリスクがなくなるわけではありません。火災保険や孤独死に備える保険への加入もあわせて検討しましょう。
当社の見解としては、「高齢者だから断る」のではなく、「仕組みを整えたうえで受け入れる」ことが、これからの賃貸経営では重要になると考えています。
よくある質問
Q. セーフティネット住宅に登録すると、要配慮者以外には貸せなくなりますか?
A. 「登録住宅」は要配慮者の入居を拒まない住宅で、要配慮者以外の方も入居できます。要配慮者のみが入居できる「専用住宅」とは区別されています。
Q. 居住サポート住宅の認定を受けないと、居住支援法人のサービスは使えませんか?
A. 認定を受けていない住宅でも、居住支援法人の見守りや相談のサービスを利用できる場合があります。サービスの内容は法人にご確認ください。
Q. 入居者が亡くなった場合、部屋の価値は下がりますか?
A. 発見までの期間や室内の状況によって異なります。見守りによって早期に気づけるようにすることが、損害を小さくするうえでも重要です。
まとめ
- 高齢者への賃貸の不安は「入居中の異変」「家賃滞納」「亡くなった後の手続き」の3つ
- 見守り、認定保証業者、残置物処理の委任、終身建物賃貸借で、それぞれの不安に備えられる
- 居住支援を活用すると入居者の幅が広がり、改修費補助を受けられる場合もある
- まずは管理会社と居住支援法人に相談し、契約の仕組みを整えることから始める
参考情報・出典
- 国土交通省「住宅セーフティネット法が改正されます」(大家さん・事業者の皆様へ)
- 国土交通省「残置物の処理等に関するモデル契約条項」
- 国土交通省「セーフティネット住宅情報提供システム」
- 内閣府「令和8年版高齢社会白書」トピックス
※本記事の情報は2026年11月時点のものです。補助制度や認定要件は自治体の窓口に、契約内容は専門家にご確認ください。
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