「金利が上がって、家賃収入のほとんどが返済に消えている」「空室が増えて、毎月の持ち出しが続いている」——2026年に入り、収益物件のオーナー様からこうしたご相談が増えています。
返済比率が高い状態を放置すると、修繕や空室が重なったときに資金繰りが一気に苦しくなります。一方で、早めに手を打てば選択肢は多く残っています。この記事では、返済比率の確認方法と目安、そして状況に応じた5つの対処法を、メリットと注意点とあわせて解説します。
返済比率とは?計算方法と目安
返済比率とは、家賃収入に対してローン返済額が占める割合のことです。
返済比率(%)= 年間のローン返済額(元金+利息)÷ 年間の家賃収入 × 100
家賃収入には「満室時の想定家賃」を使う場合と、「実際に入っている家賃」を使う場合があります。現状を正しく把握するには、実際の家賃収入で計算することをおすすめします。
返済比率の目安は、一般的に40〜50%とされています。家賃収入からは返済のほかに、管理費・修繕費・固定資産税・保険料などの経費を支払う必要があり、空室による減収にも備えなければならないためです。60〜70%を超えると、空室や突発的な修繕に対応しにくくなるといわれています。
あわせて、金融機関が重視するDSCR(借入金償還余裕率)も確認しておきましょう。DSCRは「年間の純収益(家賃収入から経費を引いた額)÷ 年間返済額」で求め、1.0を下回ると家賃収入だけでは返済をまかなえない状態を意味します。
なぜ返済比率が高くなってしまうのか
購入時は問題なかった返済比率が、後から高くなる主な原因は次の3つです。
1. 金利の上昇
日本銀行は2026年に政策金利を2度引き上げ、2026年11月7日時点で1.25%程度となっています。短期プライムレートに連動するアパートローンでは、金利の引き上げが返済額に反映されやすく、たとえば三井住友信託銀行は2026年11月2日付の短期プライムレート改定に伴い、アパートローンを含むローン金利を0.25%引き上げると発表しています。不動産投資ローンは事業性融資のため、住宅ローンのような「5年ルール」が適用されない契約が多い点にも注意が必要です。
金利の最新動向は2026年の不動産金利の解説記事で詳しくまとめています。
2. 空室・家賃の下落
入居者が減ったり、募集のために家賃を下げたりすると、返済額は変わらないまま分母の家賃収入が減り、返済比率が上がります。
3. 購入時の借入条件
自己資金をほとんど入れないフルローンや、返済期間が短い借入で購入した場合、もともと返済比率が高めになっています。そこに金利上昇や空室が重なると、余裕がなくなりやすくなります。
試算:金利と空室で返済比率はどう変わるか
次の条件で、返済比率の変化を試算しました。
【試算条件】満室時の年間家賃収入1,000万円/借入額1億円/返済期間25年/元利均等返済
| 状況 | 年間返済額(概算) | 返済比率(満室時) |
|---|---|---|
| 金利2.0% | 約509万円 | 約51% |
| 金利3.0% | 約569万円 | 約57% |
| 金利3.5% | 約601万円 | 約60% |
| 金利3.5%+空室率10%(家賃収入900万円) | 約601万円 | 約67% |
※この数値は考え方を説明するための例で、特定の金融機関の金利ではありません。
金利が1.5%上がり、空室が1割出るだけで、返済比率は約51%から約67%まで上がります。ここから経費を支払うと、手元に残るお金はほとんどなくなる計算です。
返済比率が高くなったときの5つの対処法
対処法は、大きく「収入を増やす」「返済を減らす」「物件を手放す」の3つの選択肢に分かれます。
対処法1:家賃収入を増やす(空室対策・賃料の見直し)
返済比率の分母である家賃収入を増やす方法です。空室を埋める、更新時や入れ替え時に相場に合わせて賃料を見直す、駐車場や自販機などの付帯収入を検討するといった方法があります。金融機関との交渉を伴わないため、最初に取り組みやすい対策です。具体的な方法は不動産投資における空室対策の記事をご覧ください。
対処法2:借り換えで金利や返済期間を見直す
別の金融機関に借り換えて、金利を下げたり返済期間を延ばしたりする方法です。固定金利への借り換えで、今後の金利上昇リスクを抑えることもできます。ただし、事務手数料・保証料・抵当権の設定登記費用、現在のローンの繰上返済手数料などの諸費用がかかります。金利上昇局面では審査も厳しくなる傾向があるため、諸費用を含めた総額で得になるかを試算してから判断しましょう。
対処法3:今の金融機関に返済期間の延長を相談する
返済期間を延ばすと、毎月の返済額が下がります。上の試算条件(借入額1億円・金利3.5%)で返済期間を25年から30年に延ばすと、年間返済額は約601万円から約539万円になり、満室時の返済比率は約60%から約54%に下がります。一方で、返済期間が延びる分、利息を含めた総返済額は増えます。また、建物の耐用年数との関係で、延長できる期間には限りがあります。
対処法4:繰上返済で元金を減らす
手元資金に余裕がある場合は、繰上返済で元金を減らす方法もあります。同じ条件で1,000万円を繰上返済して借入残高を9,000万円にすると、年間返済額は約541万円になります。ただし、手元資金を返済に回しすぎると、修繕や空室に備える余裕がなくなります。当社の見解としては、少なくとも数か月分の返済額と、予定している修繕費は手元に残しておくことをおすすめします。
対処法5:売却・物件の組み替えを検討する
収入を増やす方法や借入条件の見直しで改善が難しい場合は、売却も選択肢です。収支が悪化している物件を手放し、残った資金で条件のよい物件に組み替える方法もあります。売却を考える際は、まず「売却価格の見込み」と「ローンの残高」を比べることが大切です。売却価格がローン残高を上回れば、売却で借入を完済できます。下回る場合は、不足分を自己資金で補う必要があります。売却時の税金は保有期間や取得費によって変わるため、税理士にご確認ください。
売却の具体的な進め方は不動産売却の流れをご覧ください。
返済が苦しくなる前に:返済条件の変更(リスケジュール)について
家賃収入で返済をまかなえない状態が続きそうな場合は、延滞する前に金融機関へ相談しましょう。一定期間、返済額を減らしたり元金の返済を猶予してもらったりする「返済条件の変更(リスケジュール)」という方法があります。
ただし、条件変更中は新しい融資を受けにくくなるのが一般的です。金融機関からは、収支の改善計画を求められることもあります。リスケジュールは「時間を稼ぐための手段」と考え、その間に空室対策や売却などの根本的な対策を進めることが重要です。
当社の見解としては、延滞が発生してからではなく、「このままでは数か月後に苦しくなる」と分かった時点で相談する方が、取れる選択肢は多くなると考えています。
よくある質問
Q. 返済比率は何%を超えたら危険ですか?
A. 一般的には40〜50%が目安とされ、60〜70%を超えると空室や修繕への対応が難しくなるといわれています。ただし、物件の経費率や手元資金、他の収入によって安全な水準は異なります。まずは実際の家賃収入で計算し、経費を引いた後の手残りを確認しましょう。
Q. 借り換えはどのくらい金利差があれば効果がありますか?
A. 目安の一つとして「金利差1.0%以上・残債1,000万円以上・残りの返済期間10年以上」が挙げられることがあります。ただし、諸費用や繰上返済手数料もかかるため、総額での比較が必要です。
Q. ローン残高が売却価格を上回っていても売却できますか?
A. 不足分を自己資金で補えれば売却できます。補えない場合は、金融機関との相談が必要になります。まずは査定で売却価格の見込みを確認し、残高との差を把握することから始めましょう。
Q. 返済条件の変更を相談すると、今後の融資に影響しますか?
A. 条件変更中は新しい融資を受けにくくなるのが一般的です。一方で、延滞してしまうと信用への影響はより大きくなります。影響については金融機関に事前に確認し、早めに相談することをおすすめします。
まとめ
- 返済比率は「年間返済額÷年間家賃収入」で計算し、目安は40〜50%
- 金利上昇と空室が重なると、返済比率は短期間で大きく上がる
- 対処法は「家賃収入を増やす」「借り換え・期間延長・繰上返済で返済を減らす」「売却・組み替え」の3方向
- どの方法も、諸費用や総返済額、手元資金への影響を含めて比較する
- 返済が苦しくなりそうなら、延滞する前に金融機関や専門家へ相談する
返済比率の問題は、早めに気づいて動くほど選択肢が多く残ります。まずは保有物件の現在の収支と価値を確認することから始めましょう。
参考情報・出典
- 日本銀行(金融政策決定会合の結果)
- 三井住友信託銀行「ローン金利の変更について」(2026年9月28日)
- アットホーム「不動産投資の返済比率は50%以下がいい?」
- 中小機構 J-Net21「リスケジュールとは」
- 東急リバブル「金利上昇時代の不動産投資ローン戦略」
※本記事の情報は2026年11月時点のものです。借入条件の変更や借り換えの可否は金融機関によって異なります。個別の判断は、金融機関・税理士等の専門家にご確認ください。
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