不動産査定の完全ガイド
査定の種類・相場の調べ方と査定書の見方
「うちはいくらで売れる?」を正しく知るために、査定の種類と使い分け、査定価格の決まり方、自分で相場を調べる方法、査定書のチェックポイントまでをまとめました。高い査定に振り回されないコツもわかります。
この記事でわかること
- 査定価格・売り出し価格・成約価格の違い
- AI査定・机上査定・訪問査定・鑑定の使い分け
- 査定価格がどうやって決まるか
- 自分で相場を調べる方法
- 査定の前に用意しておくもの
- 査定書のチェックポイントと会社の選び方
- 査定でよくある失敗
- 査定のあとの進め方
01不動産査定とは?3つの「価格」の違い
不動産会社の査定価格は、「今売り出したら、3か月ほどで売れそうな価格」の予想です。その価格で買い取ってもらえるわけでも、その価格で必ず売れるわけでもありません。まずは、よく似た3つの価格の違いを押さえておきましょう。
査定価格
周辺の取引事例や物件の状態から、「この価格なら売れそう」と予想した価格です。
売り出し価格
査定価格を参考に、売主が決めて広告に出す価格です。交渉の余地を見込んで少し高めにすることもあります。
成約価格
買主との交渉を経て、実際に契約した価格です。相場を知るうえで、最も大切なデータです。
- 売り出してからの、周辺の売り物件の増減や金利の動き
- 「早く売りたい」「すぐ買いたい」など、売主・買主それぞれの事情
- 形の悪い土地や古い建物など、比べられる事例が少ない物件
- 査定した会社ごとの考え方や、販売力の違い
一般に、事例が多いマンションは査定と成約の差が小さく、個性が強い一戸建てや土地は差が大きくなりやすい傾向があります。
02査定の種類と使い分け
| 方法 | 費用 | かかる時間 | 精度 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|---|
| AI査定・シミュレーション | 無料 | その場で | 低め(目安) | なんとなく相場を知りたい |
| 机上査定(簡易査定) | 無料 | 当日〜数日 | 中くらい | 売るか迷っている、住み替えの予算を考えたい |
| 訪問査定 | 無料 | 現地調査1時間前後+結果まで数日〜1週間 | 高い | 売ることを決めた、売り出し価格を決めたい |
| 不動産鑑定 | 数十万円ほど | 2〜4週間ほど | 高い(公的な説明に使える) | 親族間の売買、裁判・調停、相続の争いなど |
※不動産会社の査定は無料が一般的です。「不動産鑑定評価書」を出せるのは不動産鑑定士だけで、第三者に価格の根拠を示す必要があるときに使います。
それぞれの特徴
AI査定
過去の取引データなどから自動で計算します。名前や連絡先を入れずに使えるものもあり、気軽です。ただし、日当たり・眺め・傷み具合・リフォームなど、その物件ならではの事情は反映されません。
机上査定
住所・面積・築年数・間取りなどの情報と、周辺の取引事例から、担当者が価格を出します。現地を見ないため、建物の状態はおおまかにしか反映されません。
訪問査定
担当者が現地で、室内の状態・日当たり・眺め・道路との関係・周りの環境などを確認します。売り出し価格を決めるなら、訪問査定がおすすめです。
不動産鑑定
国の基準に沿って、不動産鑑定士が価格を評価します。売却が目的なら、通常は不動産会社の査定で十分です。
目的ごとのおすすめ
| 目的 | おすすめの方法 | メモ |
|---|---|---|
| 売却を考えている | 机上査定 → 訪問査定(2〜3社) | 売る気持ちが固まったら訪問査定へ |
| 住み替えの予算を知りたい | 机上査定 | ローン残高と比べて、手取りの目安を出す |
| 相続税の申告 | 原則は路線価・固定資産税評価額で計算 | 税理士に相談。特殊な土地では鑑定を使うことも |
| 遺産分割・離婚の財産分与 | 複数の会社の査定、話がまとまらなければ鑑定 | 全員が納得できる根拠があることが大切 |
| 親族・会社との売買 | 不動産鑑定 | 相場より安すぎると、贈与とみなされることがある |
| 投資物件の売却 | 収益物件に強い会社の訪問査定 | 家賃・入居率・利回りから価格を見る |
03査定価格はどうやって決まる?
不動産の価格の出し方には、大きく分けて3つの方法があります。物件の種類によって、主に使う方法が違います。
取引事例比較法
近くで似た物件がいくらで売れたかをもとに、広さ・築年数・駅からの距離・階数などの違いを補正して価格を出します。
原価法
同じ建物を今建てるといくらかかるかを計算し、古くなった分を差し引きます。土地の価格と足すと「積算価格」になります。
収益還元法
家賃収入から経費を引いた純収益を、利回りで割って価格を出します。「いくら稼げる物件か」で評価する方法です。
| 物件の種類 | 主に使う方法 |
|---|---|
| マンション | 取引事例比較法(同じマンションや近くのマンションの成約事例) |
| 一戸建て | 土地は取引事例比較法、建物は原価法。両方を合わせて評価 |
| 土地 | 取引事例比較法(形・道路・広さで補正) |
| アパート・投資物件 | 収益還元法を中心に、積算価格も参考に |
価格を左右する主な要素
| 項目 | プラスになりやすい | マイナスになりやすい |
|---|---|---|
| 立地 | 駅・学校・スーパーが近い、人気の学区、静かな住宅地 | 交通が不便、騒音、浸水などの災害リスク |
| 土地 | 形が整っている、南側に道路、角地 | 旗竿地・不整形、道路が狭い、高低差、再建築できない |
| 建物 | 手入れが行き届いている、リフォーム済み、新耐震基準 | 雨漏り・傾き・シロアリ、設備の故障、旧耐震基準 |
| マンション | 管理が良い、修繕積立金が十分、高い階・角部屋 | 管理費の滞納、積立金不足、低い階で日当たりが悪い |
| 権利・法律 | 所有権、境界が確定している | 借地・共有名義、境界が未確定、市街化調整区域 |
04自分で相場を調べる方法
査定を頼む前に、自分でもおおよその相場を知っておくと、査定価格が高すぎるか、安すぎるかを判断できます。無料で使える情報を紹介します。
| 調べ方 | わかること | 注意点 |
|---|---|---|
| 不動産情報ライブラリ(国土交通省) | 実際の取引価格・成約価格、公示地価、ハザード情報など | 番地までは出ないため、近いエリアの目安として使う |
| レインズ・マーケット・インフォメーション | 不動産会社が登録した成約価格(マンション・一戸建て) | 物件が特定されないよう、情報は一部ぼかされている |
| 不動産ポータルサイト | いま売りに出ている、似た物件の価格 | 売り出し価格なので、成約価格は少し下になることが多い |
| 路線価図(国税庁) | 道路ごとの土地の1㎡あたりの価格(相続税の基準) | 公示地価の8割ほどの水準。÷0.8で公示地価の水準に換算 |
| 固定資産税評価額 | 納税通知書でわかる土地・建物の評価額 | 土地は公示地価の7割ほどの水準。建物は実際の価値と大きくずれることも |
路線価や公示地価は年に1回の評価で、最新の相場や、その土地の形・道路の状況などは反映しきれません。人気のエリアでは実際の取引価格が公示地価を上回ることも、逆に需要の少ない地域では下回ることもあります。近くの成約事例と合わせて見るようにしましょう。
05査定の依頼から結果が出るまで
- 1査定を申し込む当日
ウェブ・電話・来店で申し込みます。住所・面積・築年数・間取り、売りたい時期、査定の理由を伝えます。
- 2机上査定の結果を受け取る当日〜数日
まずはおおよその価格を知り、訪問査定に進むかを決めます。
- 3訪問査定(現地の確認)マンション30分〜1時間・一戸建て1〜2時間ほど
室内・外まわり・設備・日当たり・道路・周りの環境などを確認し、気になる点の聞き取りをします。
- 4役所などでの調査数日
法務局の登記、役所での道路・都市計画・上下水道などを調べます。
- 5査定書を受け取り、説明を聞く訪問から数日〜1週間
価格の根拠、売れるまでの期間の見込み、販売の進め方などの説明を受けます。
- 室内:壁・床・天井の傷み、水まわり、雨漏りの跡、日当たり・眺め・におい
- 外まわり:外壁・屋根・基礎のひび割れ、駐車場、庭、境界標
- 周りの環境:道路の幅と状況、騒音、近くの施設、嫌われやすい施設がないか
- マンション:共用部分の清掃、管理人の勤務、掲示板、駐車場・駐輪場の様子
掃除は普段どおりで大丈夫です。ただし、不具合は正直に伝えましょう。あとから見つかると価格が下がったり、契約のトラブルになったりします。
06査定の前に準備しておくもの
査定は、住所や面積がわかれば申し込めます。下の資料があると査定の精度が上がり、話も早く進みます。すべてそろっていなくても大丈夫です。
| 資料 | わかること | あると良い物件 |
|---|---|---|
| 固定資産税の納税通知書 | 土地・建物の面積、評価額 | すべて |
| 購入したときの契約書・重要事項説明書 | 面積、権利、購入価格、法律上の制限 | すべて |
| 登記済権利証・登記識別情報 | 所有者、面積 | すべて(査定ではコピーで可) |
| 測量図・境界確認書 | 土地の正確な面積、境界 | 土地・一戸建て |
| 建物の図面・確認済証・検査済証 | 間取り、構造、法律に合った建物か | 一戸建て |
| リフォーム・修繕の記録 | 手を入れた時期と内容 | 一戸建て・マンション |
| 管理規約・長期修繕計画・総会の議事録 | 管理の状態、修繕積立金 | マンション |
| 賃貸借契約書・家賃の一覧 | 家賃収入、入居の状況 | 貸している物件・投資物件 |
| ローンの返済予定表 | ローンの残り | ローンが残っている物件 |
※印鑑証明書や住民票は、査定では必要ありません(売買契約や決済のときに使います)。
「屋根と外壁を5年前に塗り直した」「給湯器を2年前に交換」「冬も日当たりが良い」「近所が静か」など、住んでいるからこそわかる良い点は、査定の担当者に伝わるようにメモしておきましょう。
07査定書の見方と不動産会社の選び方
査定を頼むのは2〜3社ほどが目安です。大手と地域に詳しい会社を組み合わせると、違う視点の意見を聞けます。比べるときは、価格の高さよりも根拠の確かさを見ましょう。
宅地建物取引業法では、不動産会社が売却の価格について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならないと決められています。「なぜこの価格なのか」を遠慮なく質問しましょう。
査定書のチェックポイント
- 比べた成約事例が載っている(売り出し価格だけではない)
- 事例が近い場所・似た条件で、時期が新しい
- プラス・マイナスの補正の理由が説明されている
- 売れるまでの期間の見込みが示されている
- 価格に幅がある(例:2,800〜3,000万円)
- 売れなかったときの見直し方が説明されている
- 道路・法律上の制限など調査した内容が書かれている
- 物件の弱点も正直に書かれている
高すぎる査定に注意
- ほかの会社より、極端に高い(1〜2割以上など)
- 「この価格で買いたい人がいます」と言うが、具体的な話がない
- 根拠を聞いても「当社なら売れます」としか答えない
- 媒介契約を急がせる、契約期間を長くしたがる
契約を取るために高めの査定を出し、売れないと値下げを提案されることがあります。長く売れ残ると「何か問題がある物件では」と思われ、結局、相場より安く売ることにもなりかねません。
一括査定サイトを使うときは
一度の入力で複数の会社に査定を頼めて便利です。一方で、申し込み直後に多くの会社から電話が来ることがあります。依頼する会社を自分で選べるサイトを使う、連絡方法の希望(メールのみなど)を書いておくと安心です。
08査定でよくある失敗と対策
| よくある失敗 | どうなる? | 対策 |
|---|---|---|
| 一番高い査定の会社に決めた | 売れ残って値下げ。結局、相場より安く売ることに | 根拠と販売の計画で選ぶ。価格は自分で決める |
| 1社だけで決めた | 価格が相場どおりか判断できない | 2〜3社に頼んで比べる |
| 不具合を伝えなかった | あとで見つかり、値下げや契約のトラブルに | 雨漏り・故障などは査定のときに正直に伝える |
| AI査定の価格をそのまま信じた | 物件の個性が反映されず、期待とずれる | AI査定は入口と考え、訪問査定で確かめる |
| ローンの残りを確認していなかった | 売っても返しきれないことがあとでわかる | 査定と同時にローン残高を確認し、手取りを計算する |
| 査定から時間がたってから売り出した | 相場や周辺の物件が変わり、価格がずれる | 査定の目安は3か月ほど。時間がたったら取り直す |
09査定のあとの進め方
売り出し価格を決める
| 方針 | 売り出し価格の目安 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 高めに挑戦 | 査定より5〜10%ほど高く | 時間に余裕がある。反応がなければ1か月ほどで見直す |
| 相場どおり | 査定の前後 | 多くの方。値引き交渉の余地を少し見込む |
| 早さを優先 | 査定より少し下 | 期限がある。買取の価格とも比べる |
売り出し価格を決める前に、仲介手数料・税金・ローン返済を引いた手取り額を計算しておきましょう。「最低いくら手元に残れば良いか」がわかると、値引き交渉にも落ち着いて対応できます。売却の流れや費用・税金については、「不動産売却の完全ガイド」で詳しく解説しています。
売却以外での査定の使い道
住み替えの資金計画
今の家がいくらで売れそうかがわかると、次の家の予算や、住み替えローンの必要額が見えてきます。
相続・遺産分割の話し合い
家を相続する人が、ほかの相続人にお金を払う「代償分割」などの話し合いの目安になります。
離婚の財産分与
家の価値とローンの残りを比べ、家を売るか、どちらかが住み続けるかを決める材料になります。
資産の見直し
使っていない土地や空き家を、売る・貸す・持ち続けるのどれが良いかを考える材料になります。
Qよくある質問
Q査定にお金はかかりますか?
Q査定を頼んだら、売らないといけませんか?
Q査定は何社くらいに頼めばいいですか?
Q住んだまま訪問査定を受けられますか?
Q査定価格はどれくらいの期間有効ですか?
Q相続税の申告には不動産鑑定が必要ですか?
QAI査定の価格は信用できますか?
まとめ:査定を上手に使う5つのポイント
- 査定価格は「予想」:その価格で必ず売れるわけではない。
- 目的で方法を選ぶ:売却なら訪問査定、第三者への説明が必要なら鑑定。
- 自分でも相場を調べる:不動産情報ライブラリなどで成約価格を確認する。
- 2〜3社を根拠で比べる:一番高い査定ではなく、説明に納得できる会社を選ぶ。
- 不具合は正直に伝える:正確な査定と、あとのトラブル防止につながる。
査定は、売るかどうかを決めるための大切な材料です。疑問に思ったことは遠慮なく担当者に質問し、納得してから次の一歩に進みましょう。
ご注意ください
- 本記事は、2026年11月時点の一般的な情報です。各サイトの内容や制度は変わることがあります。
- 記事内の期間・割合・金額は一般的な目安であり、実際の査定価格や売却価格を保証するものではありません。
- 相続・離婚・税金など個別の判断は、税理士・弁護士・不動産鑑定士などの専門家にご相談ください。