「長年経営してきたアパートを子に引き継がせたいが、相続税が心配」「マンション経営の相続対策として、どのような方法が効果的なのか知りたい」「収益物件特有の相続税軽減策があれば教えてほしい」
このような収益物件の相続対策に関するご相談を多数お受けいたします。アパートやマンションなどの収益物件は、一般的な居住用不動産とは異なる特性があり、その特性を活かした専門的な相続対策により、大幅な相続税軽減を実現することが可能です。
収益物件の相続では、貸付事業用宅地等の特例による50%の評価減、法人化による節税効果、収益を活用した計画的な生前贈与など、多様な対策手法を組み合わせることで、効果的な税負担軽減を図ることができます。 また、収益物件特有の評価方法や、賃貸事業の継続性を考慮した承継計画により、事業の安定性と税負担の軽減を両立させることが重要です。
本記事では、アパート・マンション経営者の皆様に向けて、収益物件特有の相続対策手法を体系的にご紹介いたします。具体的な事例とともに、実践的な相続税軽減策をお伝えいたしますので、収益物件をお持ちの方の相続計画にお役立てください。
この記事でお伝えする内容
- 収益物件の相続税評価の仕組み
- 貸付事業用宅地等の特例活用法
- 法人化による相続対策効果
- 収益を活用した生前贈与戦略
相続税制度の基本や2024年改正については、【2024年最新】相続税改正完全ガイドをご参照ください。
収益物件の相続税評価の基本
収益物件の評価方法
収益物件の相続税評価は、一般的な居住用不動産とは異なる特別な評価方法が適用されます。この評価の仕組みを正しく理解することで、効果的な相続対策を講じることができます。
貸家建付地の評価 アパートやマンションの敷地は「貸家建付地」として評価され、以下の計算式により評価額が減額されます
貸家建付地の価額 = 自用地価額 × (1 - 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
一般的な減額率
- 借地権割合:60-70%(地域により異なる)
- 借家権割合:30%
- 減額効果:約18-21%程度
貸家の評価 建物については「貸家」として評価され、固定資産税評価額の約70%(借家権割合30%による減額)で評価されます。
収益物件特有の評価減要素
収益物件では、以下の要素により追加的な評価減を図ることが可能です。
空室による減額
- 相続時点での空室割合に応じた評価減
- ただし、一時的な空室は認められない場合がある
- 長期間の空室や構造的な要因による空室が対象
修繕必要箇所による減額
- 大規模修繕が必要な場合の修繕費相当額の控除
- 設備の老朽化による価値減少の反映
- 適正な修繕計画に基づく評価調整
貸付事業用宅地等の特例の活用
貸付事業用宅地等の特例の概要
貸付事業用宅地等の特例は、収益物件の相続において最も重要な税負担軽減制度です。この特例により、200㎡まで50%の評価減を受けることができます。
適用要件
- 相続開始直前において貸付事業の用に供されていた宅地等
- 相続人が相続税の申告期限まで貸付事業を継続
- 相続税の申告期限まで当該宅地等を有している
特例適用による効果 例:アパート敷地300㎡、評価額3,000万円の場合
- 適用前:3,000万円
- 適用後:200㎡分について1,500万円→750万円(50%減額)
- 残り100㎡分:1,000万円(減額なし)
- 合計:1,750万円(約42%の減額効果)
特例適用の実務上のポイント
事業実態の証明 貸付事業用宅地等の特例の適用には、実際に事業として賃貸業を営んでいることの証明が重要です。
必要な証明書類
- 賃貸借契約書
- 家賃収入の確定申告書
- 不動産所得の計算明細書
- 管理会社との管理契約書
- 入居者一覧表
事業継続の要件 相続人は、相続税の申告期限(10か月)まで貸付事業を継続する必要があります。この期間中の空室や事業停止は特例適用に影響する可能性があります。
複数物件での特例適用
複数の収益物件を所有している場合の特例適用戦略について説明いたします。
優先適用の判断基準
- 単位面積あたりの評価額が高い物件
- 立地条件が良く、将来性の高い物件
- 賃貸需要が安定している物件
分割相続との組み合わせ 複数の相続人で収益物件を分割相続する場合、それぞれが200㎡まで特例適用を受けることが可能です。
法人化による収益物件の相続対策
不動産管理法人の設立
不動産管理法人の設立により、収益物件の相続対策効果を大幅に向上させることができます。
法人化のメリット
- 株式承継による段階的な財産移転:株式の生前贈与により段階的承継
- 所得分散効果:家族への給与支払いによる所得税軽減
- 経費計上の拡大:法人経費による税負担軽減
- 事業承継税制の活用:非上場株式の相続税・贈与税納税猶予
法人化の方法と税務効果
建物譲渡方式
- 土地:個人所有のまま
- 建物:法人に譲渡
- 効果:建物部分の相続税評価額を株式評価額に変更
土地建物一括譲渡方式
- 土地・建物:すべて法人に譲渡
- 効果:不動産評価額を株式評価額に変更、より大きな評価減効果
株式評価額の算定 法人化した収益物件の株式評価額は、類似業種比準価額または純資産価額により算定され、多くの場合で不動産の相続税評価額を下回ります。
法人化のタイミングと注意点
最適な法人化タイミング
- 大規模修繕前:修繕費用を法人で負担し、個人資産の流出を図る
- 相続発生の7年以上前:法人株式の生前贈与による効果的な承継
- 収益物件の取得時:当初から法人名義で取得
注意すべきポイント
- 不動産取得税:法人への譲渡時に発生
- 登録免許税:所有権移転登記費用
- 譲渡所得税:個人から法人への譲渡益課税
収益を活用した生前贈与戦略
家賃収入を原資とした贈与
収益物件の家賃収入を原資とした計画的な生前贈与により、効果的な財産移転を実現できます。
暦年贈与の活用
- 年間110万円の基礎控除を活用
- 複数の受贈者への分散贈与
- 7年以上の長期計画による着実な財産移転
相続時精算課税制度の活用 2024年改正後の年間110万円の基礎控除により、収益物件の持分を段階的に贈与することが可能です。
収益贈与の具体例 月額家賃収入100万円のアパートの場合:
- 年間収入:1,200万円
- 経費控除後:約800万円
- 生前贈与原資:年間400-500万円程度
収益物件の持分贈与
収益物件の持分を段階的に贈与することで、将来の相続税負担を軽減できます。
持分贈与の効果
- 贈与後の収益は受贈者に帰属
- 物件価値上昇分も受贈者に移転
- 相続時の評価額を段階的に減少
持分贈与の注意点
- 共有関係の管理
- 持分に応じた収益分配
- 将来の処分時の意思統一
法人株式の贈与戦略
法人化した収益物件の株式贈与による効果的な承継戦略について説明いたします。
株式評価額の算定
- 法人設立初期:純資産価額による評価
- 事業軌道後:類似業種比準価額の適用可能性
- 評価額の変動を考慮したタイミング調整
事業承継税制の活用
- 非上場株式の相続税・贈与税納税猶予
- 一定要件下での納税免除
- 後継者への確実な事業承継
アパート・マンション種別ごとの対策
木造アパートの相続対策
木造アパートは建物の減価償却が進みやすく、特有の相続対策が効果的です。
建替えタイミングの活用
- 相続直前の建替えによる相続税評価額の圧縮
- 建築資金の借入れによる債務控除効果
- 新築による賃貸競争力の向上
土地有効活用の検討
- 容積率の余剰分を活用した増築
- 駐車場併設による収益性向上
- 近隣土地取得による規模拡大
鉄筋コンクリート造マンションの相続対策
RC造マンションは長期的な資産価値維持が期待でき、異なるアプローチが有効です。
大規模修繕との連携
- 修繕積立金の計画的な準備
- 修繕工事費用による一時的な評価減
- 修繕後の資産価値向上効果
区分所有から一棟所有への転換
- 区分所有の買い増しによる一棟化
- 管理の一元化による効率性向上
- より大きな特例適用効果
2割加算対象者への収益物件承継については、不動産相続で2割加算を軽減する完全ガイドで詳しく解説しています。
立地別の戦略
都市部の収益物件
- 高い評価額に対する特例適用の重要性
- 建替え・大規模修繕による評価調整
- 法人化による評価減効果の最大化
岡山県内の収益物件相続の地域特性については、岡山県の不動産相続のポイントをご参照ください。
地方部の収益物件
- 相対的に低い評価額を活かした生前贈与
- 地域特性に応じた事業継続計画
- 空室リスクを考慮した保守的な評価
相続発生後の収益物件管理
共有状態の解消
複数相続人による収益物件の共有状態は、早期解消が重要です。
分割方法の選択肢
- 現物分割:物件の物理的分割
- 代償分割:一人が取得し、他の相続人に代償金支払い
- 換価分割:売却して現金を分割
共有解消の実務
- 収益配分の明確化
- 管理責任の明確化
- 将来の売却・建替え時の意思決定方法
事業承継の円滑化
収益物件の経営を引き継ぐ相続人への円滑な事業承継について説明いたします。
経営ノウハウの承継
- 入居者管理のポイント
- 修繕・メンテナンス計画
- 収支管理と税務申告
取引先との関係継続
- 管理会社との契約引継ぎ
- 金融機関との取引関係
- 各種業者との関係維持
将来計画の策定
相続後の収益物件運営における中長期計画の重要性について説明いたします。
事業計画の見直し
- 市場環境の変化への対応
- 建物の長寿命化計画
- 収益性向上のための改善策
次世代への準備
- 二次相続対策の検討
- 事業の更なる発展計画
- 新たな投資機会の検討
実際の相続事例と対策効果
木造アパート相続事例
事例:築20年木造アパート(10戸、土地400㎡、総評価額8,000万円)
対策前の相続税額
- 土地評価額:5,000万円
- 建物評価額:3,000万円
- 想定相続税額:約1,500万円
対策実施後
- 貸付事業用宅地等の特例適用:土地200㎡分50%減額
- 建物の貸家評価:30%減額
- 最終評価額:約5,650万円
- 相続税額:約800万円
- 節税効果:約700万円
RC造マンション法人化事例
事例:RC造マンション(20戸、土地600㎡、総評価額2億円)
法人化による対策
- 不動産管理法人設立
- 建物のみ法人に譲渡
- 株式の段階的贈与を実施
対策効果
- 株式評価額:建物相続税評価額の約60%
- 10年間の株式贈与により約8,000万円の財産移転
- 実質的相続税負担:約40%軽減
地方都市アパート承継事例
事例:地方都市のファミリー向けアパート(8戸、総評価額4,000万円)
世代交代型承継
- 相続時精算課税制度活用
- 年間110万円基礎控除による持分贈与
- 15年計画での段階的承継
承継効果
- 贈与税負担:なし(基礎控除内)
- 相続税対象:大幅減額
- 事業の円滑な世代交代を実現
収益物件相続対策の注意点
よくある失敗事例
空室率の過大評価 相続時点での一時的な空室を理由とした過度な評価減の主張は、税務調査で否認されるリスクがあります。
事業実態の不備 形式的な賃貸借契約のみで、実際の事業実態が伴わない場合、貸付事業用宅地等の特例が適用されない可能性があります。
法人化のタイミング誤り 相続直前の法人化は、税務上の問題を生じる可能性があり、十分な準備期間を設けることが重要です。
税務調査への対応
収益物件の相続は税務調査の対象となりやすいため、適切な準備と対応が必要です。
調査で確認される項目
- 賃貸借契約の実態
- 家賃収入の申告状況
- 修繕履歴と必要性
- 空室の実態と期間
対応のポイント
- 客観的な証拠資料の整備
- 適正な評価根拠の説明
- 専門家による事前チェック
まとめ
収益物件の相続対策は、物件の特性を活かした専門的なアプローチにより、大幅な相続税軽減を実現することが可能です。貸付事業用宅地等の特例による50%の評価減、法人化による評価減効果、収益を活用した計画的な生前贈与など、多様な手法を組み合わせることで、効果的な税負担軽減を図ることができます。
重要なことは、収益物件特有の評価方法や制度を正しく理解し、個々の物件の特性に応じた最適な対策を講じることです。特に、貸付事業用宅地等の特例の適用要件を満たすための事業実態の維持や、法人化による中長期的な節税効果の実現には、専門的な知識と計画的な実行が不可欠です。
また、アパート・マンション経営は単なる資産保有ではなく、事業としての側面が強いため、相続対策と事業継続の両立を図ることが重要です。次世代への円滑な事業承継と、安定した収益確保を両立させるための総合的な計画策定により、長期にわたる資産価値の維持・向上を実現できます。
収益物件をお持ちの皆様が、適切な相続対策により税負担を軽減しながら、次世代への確実な事業承継を実現していただけることを心より願っております。専門家との連携により、個々の状況に最適な対策を講じ、安心して事業を継続していただければ幸いです。
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