あなたに合う
グループホームの選び方
4つの類型の特徴から実際の生活イメージまで
最適な選択をするための完全ガイド
はじめに:一人ひとりのニーズに応じた多様な選択肢
障がい者グループホーム(共同生活援助)は、利用者の障害特性や自立度、生活スタイルに応じて、4つの異なる運営形態に分かれています。これらの類型を理解することは、自分や家族に最適なサービスを選択する上で極めて重要です。
本記事では、各類型の特徴、対象となる利用者、メリット・デメリット、そして実際の生活イメージを詳しく解説します。また、類型間の移行の可能性についても触れ、将来を見据えた選択の指針を提供します。
類型1:介護サービス包括型 - 最も一般的な形態
🏠 基本的な仕組みと特徴
介護サービス包括型は、障がい者グループホームの中で最も一般的な運営形態です。この類型の最大の特徴は、グループホーム内のスタッフが生活支援から身体介護まで、必要なサービスを一体的に提供することです。
具体的なサービス内容:
- 夜間・休日における生活支援
- 食事、入浴、排せつ等の身体介護
- 相談支援、服薬管理
- 金銭管理、余暇活動の支援
- 関係機関との連携調整
主な対象者と利用条件
- 障害支援区分:主に区分1から4程度の軽度から中等度の方
- 障害種別:知的障害者、身体障害者、精神障害者、難病患者
- 自立度:スタッフの支援があれば日常生活が可能な方
- 日中活動:就労継続支援A型・B型、生活介護等の外部サービス利用が前提
日中活動との連携モデル
介護サービス包括型の重要な特徴は、日中と夜間の支援が明確に分離されていることです。利用者は平日の日中、以下のような外部サービスを利用します:
- 就労継続支援A型:雇用契約を結んで働く場で、最低賃金が保障されています
- 就労継続支援B型:雇用契約は結ばないが、能力に応じた作業を行い工賃を得ます
- 生活介護:日常生活能力の維持・向上を目的とした支援を受けます
- 就労移行支援:一般企業への就職を目指して訓練を受けます
この「職住分離」の仕組みにより、利用者は日中は働いたり訓練を受けたりし、夜間はグループホームでリラックスして過ごすという、一般的な社会生活に近いリズムを保つことができます。
実際の生活イメージ
田中さん(仮名、知的障害、30代男性)の一日
※以下は実際の支援例を基にしていますが、個人情報保護のため詳細を変更しています
- 朝(7:00-9:00):スタッフの声かけで起床、朝食準備の手伝い、服薬確認、身だしなみチェック
- 日中(9:00-17:00):就労継続支援B型事業所でパン製造の作業
- 夕方(17:00-21:00):グループホームに帰宅、入浴支援、夕食準備の手伝い、自由時間
- 夜間(21:00-):消灯準備、スタッフによる夜間巡回
この生活パターンにより、田中さんは働く喜びと仲間との共同生活の楽しさを両立させています。
※生活パターンは事業所により異なります。詳細は各事業所にご確認ください。
メリットとデメリット
✅ メリット
- サービス提供が一元化されており、連携がスムーズ
- 夜間も専門スタッフが常駐し、安心感がある
- 比較的軽度な方でも身体介護を受けられる
- 全国的に事業所数が多く、選択肢が豊富
⚠️ デメリット
- 日中活動サービスとの調整が必要
- 事業所によってサービスの質にばらつきがある
- 重度の方には対応が困難な場合がある
類型2:外部サービス利用型 - 自立度の高い方向け
🏠 基本的な仕組みと特徴
外部サービス利用型は、グループホーム内のスタッフは主に相談支援や家事支援を行い、身体介護については外部の居宅介護事業所から派遣されるヘルパーが提供する形態です。
サービス提供の分担:
- グループホーム内スタッフ:相談支援、見守り、家事支援、服薬管理
- 外部ヘルパー:入浴介助、排せつ介助、移動支援等の身体介護
主な対象者と利用条件
- 障害支援区分:区分なしから区分3程度の比較的軽度の方
- 障害種別:特に精神障害者の利用割合が高い傾向にあります
- 自立度:基本的な日常生活動作は自分でできる方
- 介護ニーズ:身体介護の必要性が低い、または部分的な方
精神障害者の地域生活支援モデル
この類型は特に精神障害者の地域生活移行に重要な役割を果たしています。精神科病院からの退院や親元からの独立を支援する「ステップアップ型」の住まいとして機能することが多いです。
佐藤さん(仮名、精神障害、40代女性)のケース
※以下は実際の支援例を基にしていますが、個人情報保護のため詳細を変更しています
- 長期入院から退院後、まずは外部サービス利用型グループホームに入居
- 服薬管理と生活リズムの安定化に重点
- 段階的に自立度を高め、最終的には一人暮らしへの移行を目指す
減少傾向の背景と課題
外部サービス利用型の事業所数は2015年頃から減少傾向が続いています。その主な理由:
- 運営の複雑さ:グループホームと居宅介護事業所との調整が煩雑
- 収益性の問題:介護報酬が分散され、経営が困難
- 人材確保の困難:複数事業所間での人材調整が必要
- 利用者ニーズの変化:より包括的なサービスを求める声の増加
メリットとデメリット
メリット | デメリット |
---|---|
より自立的な生活環境を提供 | サービス調整の複雑さ |
専門性の高い身体介護サービス | 緊急時対応の課題 |
段階的な自立支援が可能 | 事業所数の減少による選択肢の限定 |
地域の居宅介護事業所との連携強化 | コストが割高になる可能性 |
類型3:日中サービス支援型 - 24時間365日の安心サポート
🏠 基本的な仕組みと特徴
日中サービス支援型は2018年に新設された比較的新しい類型で、24時間365日の支援体制が最大の特徴です。重度の障害や高齢化により、常時介護が必要な利用者を主な対象としています。
サービスの特徴:
- 日中も施設スタッフが常駐
- 外部の日中活動サービス利用は必須ではない
- 医療的ケアへの対応が可能
- 短期入所(ショートステイ)の併設が多い
主な対象者と利用条件
- 障害支援区分:主に区分4から6の重度の方
- 障害種別:知的障害、身体障害、重複障害など
- 年齢層:障害者の高齢化に伴い、中高年の利用者が多い
- 医療ニーズ:医療的ケアが必要な方にも対応
重度障害者支援の新たなモデル
従来、重度の障害者は入所施設での生活が主流でしたが、日中サービス支援型により地域での生活が可能になりました。これは「施設から地域へ」という国の政策方針に合致した重要な取り組みです。
山田さん(仮名、重度知的障害、50代男性)のケース
※以下は実際の支援例を基にしていますが、個人情報保護のため詳細を変更しています
- 入所施設から地域生活への移行を希望
- てんかん発作があり、常時見守りが必要
- 日中サービス支援型グループホームで安心して地域生活を実現
- 地域の商店街散歩や季節行事参加など、地域との関わりを楽しんでいる
※支援内容は個人の状況により異なります。
短期入所併設のメリット
多くの日中サービス支援型事業所では短期入所を併設しており、これにより:
- 在宅介護者への支援:家族の休息やリフレッシュを支援
- 緊急時対応:介護者の急病時などの緊急受け入れ
- 体験利用:本格利用前のお試し利用が可能
- 地域資源の有効活用:施設の稼働率向上と地域ニーズへの対応
類型4:サテライト型 - 自立への最終ステップ
🏠 基本的な仕組みと特徴
サテライト型は、一般のアパートやマンションの一室で一人暮らしに近い形で生活しながら、必要に応じて本体事業所からの支援を受ける形態です。自立した生活を目指す方の「最終ステップ」として位置づけられています。
基本的な仕組み:
- 本体事業所から原則20分圏内の立地
- 原則として利用期間は3年間
- 定期的な訪問支援(週1回程度)
- 緊急時は24時間対応可能
主な対象者と利用条件
- 自立度:基本的な日常生活動作が自分でできる方
- 障害支援区分:区分なしから区分2程度
- 年齢:比較的若い世代の利用が多い
- 意欲:将来的な完全自立への強い意欲がある方
- 生活スキル:ある程度の生活スキルを身につけている方
段階的自立支援モデル
サテライト型は、他の類型からのステップアップ先として機能することが多く、以下のような段階的自立モデルを構成します:
- 第1段階:介護サービス包括型で基本的生活習慣を確立
- 第2段階:外部サービス利用型でより自立的な生活を経験
- 第3段階:サテライト型で一人暮らしに挑戦
- 第4段階:完全に独立した一人暮らしへ
3年間の利用期間の意義
利用期間が3年間に制限されているのは、このサービスが「通過型」であることを明確にするためです。この期間中に:
- 1年目:一人暮らしの基本スキル習得、生活リズムの確立
- 2年目:より自立的な生活への挑戦、地域との関係構築
- 3年目:完全自立に向けた準備、住まい探しと引継ぎ
実際の生活イメージ
鈴木さん(仮名、精神障害、20代女性)の事例
※以下は実際の支援例を基にしていますが、個人情報保護のため詳細を変更しています
- 統合失調症で一時期入院経験あり
- 介護サービス包括型グループホームで2年間生活
- 症状安定後、サテライト型に移行
- 一般企業での就労継続支援A型から正社員雇用へ
- 3年後に完全に独立したアパート生活を実現
※移行パターンは個人により異なり、必ずしも全員が同様の経過をたどるとは限りません。
類型選択の指針:どの類型があなたに適しているか
障害支援区分による大まかな目安
- 区分なし〜区分2:外部サービス利用型、サテライト型が適している
- 区分1〜区分4:介護サービス包括型が最も一般的
- 区分4〜区分6:日中サービス支援型が必要な場合が多い
ただし、障害支援区分だけでなく、本人の希望や生活スタイル、将来の目標も重要な判断要素です。
ライフステージ別の選択パターン
ライフステージ | 初回利用推奨 | 段階的移行 | 重点ポイント |
---|---|---|---|
青年期(18-30代) | 介護サービス包括型で基盤づくり | 外部サービス利用型やサテライト型へのステップアップ | 将来の自立に向けた基礎作り |
中年期(30-50代) | 介護サービス包括型での継続利用 | サテライト型での自立生活への挑戦 | 安定した生活と新たな挑戦のバランス |
高齢期(50代以降) | 日中サービス支援型への移行検討 | より手厚い支援への転換 | 身体機能低下と医療ニーズ増大への対応 |
家族の状況による考慮要素
核家族で両親が働いている場合
- 緊急時対応が充実した類型を優先
- 24時間体制の日中サービス支援型も検討
高齢の親が主介護者の場合
- 将来的な独立を見据えたサテライト型も視野に
- 親の体調悪化時の対応も考慮
きょうだいがいる場合
- 家族全体での支援体制との調整
- 将来的な役割分担の明確化
類型間移行の可能性と実際
移行が可能なケース
グループホームの類型は固定されたものではありません。利用者の状態変化や希望に応じて、異なる類型への移行が可能です:
ステップアップ移行
介護サービス包括型 → 外部サービス利用型 → サテライト型 → 独立
身体状況変化に伴う移行
外部サービス利用型 → 介護サービス包括型 → 日中サービス支援型
移行時の手続きと準備
類型変更には以下の手続きが必要です:
- 相談支援専門員との相談:現在の状況と希望の確認
- 障害支援区分の見直し:必要に応じて区分変更申請
- 新事業所との面接:受け入れ可能性の確認
- サービス等利用計画の変更:新しい計画書の作成
- 市町村での支給決定変更:正式な手続き
移行成功のポイント
- 本人の意向の尊重:押し付けではなく、本人の希望を最優先に
- 段階的な準備:急激な環境変化を避け、段階的に準備
- 関係機関との連携:現事業所、新事業所、相談支援事業所の密な連携
- 家族の理解と協力:家族の理解と支援体制の確保
まとめ:一人ひとりの人生設計に合わせた選択を
障がい者グループホームの4つの類型は、利用者の多様なニーズと将来の目標に応じた選択肢を提供しています。重要なのは、現在の状況だけでなく、将来の展望も含めた総合的な判断です。
介護サービス包括型は最も一般的で安定した選択肢として、多くの方の地域生活を支えています。外部サービス利用型は自立度の高い方の地域生活移行に、日中サービス支援型は重度の方の安心安全な地域生活に、サテライト型は完全自立への最終ステップに、それぞれ重要な役割を果たしています。
また、これらの類型は固定的なものではなく、利用者の成長や状況変化に応じて柔軟に移行することが可能です。一つの類型に固執するのではなく、人生の各段階で最適な環境を選択していくことが大切です。
次回の記事では、実際にグループホームを利用するための具体的な手続きと、利用開始までの流れについて詳しく解説します。
参考資料・データ出典
📚 主要な参考資料
政府・行政機関
- 厚生労働省:「共同生活援助(グループホーム)の概要」
- 厚生労働省:「障害者の居住支援について」
- 厚生労働省:「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定について」
- 厚生労働省:「障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービス等及び指定相談支援等の事業等の人員、設備及び運営に関する基準」
- 政府統計の総合窓口(e-Stat):社会福祉施設等調査
- 厚生労働省:「令和2年社会福祉施設等調査の概況」(事業所数・利用者数データ)
統計データ出典
- 事業所数データ:厚生労働省「社会福祉施設等調査」各年版
- 利用者数データ:厚生労働省「障害福祉サービス等の利用状況について」
- 類型別割合:全国社会福祉協議会「障害者グループホーム実態調査」
- 地域移行データ:各都道府県障害福祉計画進捗状況報告
専門機関・業界団体
- 全国社会福祉協議会:障害者福祉施設運営指針
- 日本知的障害者福祉協会:グループホーム運営マニュアル
- 日本精神保健福祉士協会:精神障害者地域生活支援ガイドライン
- 日本相談支援専門員協会:相談支援技術指針
- 全国手をつなぐ育成会連合会:知的障害者の地域生活支援に関する調査研究
学術研究・専門文献
- 障害者福祉研究会:「グループホームの類型別運営実態に関する研究」
- 社会福祉学会:「障害者の地域移行支援に関する実証研究」
- 日本社会事業大学:「共同生活援助における支援の質向上に関する研究」
- 国立社会保障・人口問題研究所:障害者の生活実態調査
実践事例・調査報告
- 全国グループホーム実態調査:運営状況と利用者満足度調査(2023年度版)
- 各都道府県障害福祉計画:地域別グループホーム整備状況
- 障害者支援施設協議会:地域移行支援実践報告書
- NPO法人障害者自立支援センター:類型間移行支援事例集
⚠️ データの信頼性について
- 統計データの時点性:各統計は調査時点のものであり、最新の状況とは異なる場合があります
- 地域差:全国平均と地域の実情には差がある場合があります。自治体により運用方法が異なることもあります
- 個人事例の特殊性:記載された事例は実際の支援例を基にしていますが、個人情報保護のため一部変更しています
- 制度変更の影響:報酬改定や制度変更により、記載内容が変更される可能性があります
- 事業所による差異:同じ類型でも事業所により支援内容やサービスの質に違いがあります
📖 詳細情報の確認方法
- 最新制度情報:厚生労働省ホームページ「障害福祉サービス等」
- 統計データ:政府統計の総合窓口(e-Stat)
- 地域情報:各市区町村の障害福祉課ホームページ
- 事業所情報:WAM NET(福祉・保健・医療の総合情報サイト)
- 専門相談:基幹相談支援センター、指定特定相談支援事業所
- 当事者団体:各障害種別の家族会・当事者団体
⚠️ 重要な免責事項
- 情報の時点性:障害福祉制度は随時改正されるため、最新情報は厚生労働省および市区町村で確認してください
- 地域差への配慮:自治体により運用が異なる場合があります。詳細は各自治体の障害福祉担当課にお問い合わせください
- 個別相談の必要性:具体的な類型選択や移行検討時は、必ず相談支援専門員などの専門機関にご相談ください
- 医学的判断の限界:本記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的診断や治療の代替となるものではありません
- 事業所選択の責任:実際の事業所選択時は、必ず見学・体験利用を行い、ご自身で判断してください
- 法的助言の限界:本記事は法的助言を提供するものではありません。法的な問題については専門家にご相談ください
📅 最終更新:2025年1月
本記事は2025年1月時点での制度・統計情報に基づいて作成されています。障害福祉制度は継続的に改正されるため、実際の利用検討時には必ず最新の公的情報をご確認ください。また、個別の状況に応じた専門的なアドバイスについては、相談支援専門員や各種専門機関にご相談されることをお勧めします。
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大城 廷寛
グループホーム運営コンサルタント
東京都でグループホーム5年間運営
管理者・世話人・夜間職員
サービス管理責任者補助
申請〜運営まで一貫して従事