費用はいくら?
公的支援制度を活用した負担軽減方法
障がい者グループホームの利用料金から各種助成制度まで
お金の心配を具体的な数字で解決
はじめに:お金の心配を具体的に解決する
「グループホームを利用したいけれど、費用がどのくらいかかるのかわからない」
「障害年金だけで生活していけるのだろうか」
「親の援助なしでも暮らしていけるのか心配」
障がい者グループホームの利用を検討する際、多くの方が抱える最大の心配が費用の問題です。本記事では、実際の利用料金から各種公的支援制度まで、お金に関する疑問を具体的な数字とともに詳しく解説します。
複雑に見える制度も、一つずつ整理して理解すれば、思っているより負担は軽いことがお分かりいただけるはずです。経済的な不安を解消して、安心してグループホーム生活をスタートできるよう、実用的な情報をお届けします。
基本的な利用料金の内訳と相場
月額費用の詳細内訳
障がい者グループホームの利用には、以下の費用がかかります:
費用項目 | 地方 | 都市部 | 備考 |
---|---|---|---|
家賃 | 20,000~35,000円 | 35,000~60,000円 | 家賃補助で実質負担軽減 |
食費 | 25,000~35,000円 | 30,000~45,000円 | 3食込みが一般的 |
光熱水費 | 8,000~15,000円 | 12,000~20,000円 | 共用部分も含む |
日用品費 | 3,000~5,000円 | 5,000~8,000円 | 個人の生活用品 |
サービス利用料 | 0~37,200円 | 0~37,200円 | 所得に応じた上限 |
合計(補助前) | 56,000~127,200円 | 82,000~170,200円 | |
実質負担(補助後) | 35,000~65,000円 | 55,000~95,000円 | 各種補助制度適用後 |
地域別費用比較の詳細
実質負担(地方)
各種補助制度適用後の月額負担
実質負担(都市部)
各種補助制度適用後の月額負担
補助前(地方)
補助制度適用前の月額費用
初期費用の詳細
グループホーム利用開始時には以下の初期費用が必要です:
初期費用の内訳
事業所への支払い
- 入居時準備金・クリーニング代:10,000~25,000円
- 前払い費用(前払い式事業所の場合):20,000~40,000円
生活用品購入費
- 家具:20,000~60,000円(ベッド、机、椅子等)
- 家電:15,000~40,000円(小型冷蔵庫、テレビ等)
- 衣類・日用品:15,000~40,000円
手続き関連費用
- 各種証明書発行:2,000~5,000円
- 引越し費用:10,000~30,000円
- その他雑費:5,000~10,000円
初期費用合計:80,000~210,000円程度
※敷金・礼金・火災保険料・共益費は通常不要です
※前払い式の事業所では食費等の1~2か月分前払いが必要な場合があります
収入源の確保:障害年金と就労収入
障害基礎年金の詳細(2025年度)
障害基礎年金は、グループホーム利用者の主要な収入源です:
1級(重度)
- 月額:約86,635円(年額約1,039,625円)
- 対象:日常生活が極めて困難な方
- 例:全盲、重度知的障害、重度精神障害等
2級(中等度)
- 月額:約69,308円(年額約831,700円)
- 対象:日常生活が著しく制限される方
- 例:軽度知的障害、中等度精神障害等
※2025年度は前年度比1.9%増額となりました
就労収入の現実的な見込み
就労形態 | 月収目安 | 労働条件 | 備考 |
---|---|---|---|
就労継続支援A型 | 50,000~120,000円 | 週20~30時間程度 | 最低賃金保障あり |
就労継続支援B型 | 10,000~30,000円 | 本人の体調に合わせ調整 | 工賃は能力・作業量に応じて |
一般就労 | 80,000~200,000円以上 | 週20~40時間 | 雇用条件により社会保険加入 |
収入と支出のバランス例
Aさん(知的障害、就労継続支援B型利用)の場合
収入
- 障害基礎年金2級:69,308円
- 就労収入(B型):15,000円
- 合計:84,308円
支出(地方都市の場合)
- 家賃(補助後):15,000円(家賃30,000円-国制度10,000円-自治体助成5,000円)
- 食費:32,000円
- 光熱水費:12,000円
- 日用品・その他:8,000円
- 合計:67,000円
収支:+17,308円(医療費・娯楽費・将来への貯蓄も可能)
※自治体助成が特に手厚い一部地域では家賃負担がさらに軽減される場合もありますが、全国的には上記が一般的な例です
Bさん(精神障害、就労継続支援A型利用)の場合
収入
- 障害基礎年金2級:69,308円
- 就労収入(A型):80,000円
- 合計:149,308円
支出(都市部の場合)
- 家賃(補助後):35,000円
- 食費:40,000円
- 光熱水費:15,000円
- 日用品・その他:15,000円
- 貯蓄:44,308円
- 合計:149,308円
収支:バランス良好(将来への貯蓄も可能)
特定障害者特別給付費:家賃補助の詳細
制度の概要と目的
特定障害者特別給付費は、グループホーム利用者の家賃負担を軽減する国の制度です:
制度の特徴
- 目的:低所得者の住居費負担軽減
- 財源:国が2分の1、都道府県・市町村が各4分の1を負担
- 根拠法:障害者総合支援法
- 支給上限:月額10,000円
支給要件と対象者
所得要件(重要)
- 市町村民税非課税世帯が条件
- 本人および配偶者の所得で判定
- 親の所得は基本的に関係なし(別世帯の場合)
- 年収100万円程度までは非課税の場合が多い
その他の要件
- グループホーム(共同生活援助)の利用者
- 家賃を支払っていること
- 生活保護を受給していないこと
申請手続きの流れ
ステップ | 内容 | 必要書類 | 所要期間 |
---|---|---|---|
1. 事前確認 | 所得状況・契約内容の確認 | 非課税証明書、家賃契約書 | 1週間 |
2. 申請書類提出 | 市町村への申請書提出 | 申請書、証明書類一式 | 1日 |
3. 審査・決定 | 市町村での審査 | - | 1~2か月 |
4. 支給開始 | 事業所への直接支給 | - | 決定通知後すぐ |
地方自治体独自の助成制度
主要都市の助成制度例
神戸市(兵庫県)の例
- 制度名:グループホーム利用者家賃助成
- 対象:市町村民税非課税世帯
- 助成額:家賃1万円超過部分の2分の1(上限15,000円/月)
計算例(家賃30,000円で非課税の場合):
- 国制度:10,000円
- 自治体助成(一般的):0~10,000円程度
- 実質家賃負担:10,000~20,000円
※一部の自治体では特に手厚い助成により家賃負担がさらに軽減される場合もあります
横須賀市(神奈川県)の例
- 制度名:障害者グループホーム入居者家賃助成
- 対象:市町村民税非課税世帯
- 助成額:上限20,000円/月
計算例(家賃45,000円の場合):
- 国制度:10,000円
- 市制度:20,000円(上限内)
- 合計助成:30,000円、自己負担:15,000円
自治体制度活用のポイント
情報収集の方法
- 市町村障害福祉課への直接問い合わせ
- 自治体ホームページの制度案内確認
- 相談支援事業所からの情報提供
- 同じ地域の利用者・家族からの情報共有
申請時の注意点
- 申請期限の事前確認(年度途中での制度変更もあり)
- 必要書類の事前準備
- 国制度との併用手続きの確認
- 転居時の手続き継続性の確認
その他の経済的支援制度
医療費助成制度
制度名 | 対象者 | 助成内容 | 申請先 |
---|---|---|---|
自立支援医療(精神通院医療) | 精神障害で通院治療中の方 | 医療費自己負担を1割に軽減 | 市町村障害福祉課 |
重度心身障害者医療費助成 | 身体障害1・2級、療育手帳A判定等 | 医療費自己負担を軽減 | 市町村担当課 |
交通費助成制度
主な交通費支援
- JR等交通機関の割引:普通乗車券50%割引
- バス・地下鉄運賃割引:多くの自治体で50%割引または無料
- タクシー券助成:月額3,000~10,000円程度のタクシー券
日常生活用具給付制度
対象品目例
- 特殊寝台、車椅子、歩行器
- 入浴補助用具、便器、手すり
- 火災警報器、電磁調理器
- ファックス、携帯電話
自己負担:原則1割負担、所得に応じた月額上限設定
制度を最大限活用するための戦略
情報収集の体系的なアプローチ
1. 公的機関からの情報収集
- 市町村障害福祉課での相談
- 社会福祉協議会の活用
- 各種パンフレット・ホームページの確認
- 制度説明会への参加
2. 専門職からの情報提供
- 相談支援専門員との定期相談
- ケアマネジャーとの連携
- 医療ソーシャルワーカーへの相談
- 行政書士・社会福祉士への相談
3. 当事者・家族からの情報共有
- 家族会への参加
- 利用者同士の情報交換
- 地域の障害者団体との交流
長期的な資金計画
収入安定化の取り組み
- 障害年金の適切な級判定
- 就労収入の段階的向上
- 各種手当の申請漏れ防止
- 制度変更への迅速な対応
支出最適化の工夫
- 事業所選択での費用比較
- 共用品での節約効果活用
- 医療費助成制度の活用
- 交通費削減の工夫
緊急時対応資金の確保
- 月額収入の3~6か月分の預貯金
- 医療費急増への備え
- 事業所変更時の費用準備
- 家族からの支援体制確保
よくある質問と具体的な回答
Q: 障害年金だけで本当に生活できますか?
A: 地域と生活スタイルによります。具体例で説明します:
地方都市でB型事業所利用の場合:
- 障害基礎年金2級:69,308円
- B型工賃:15,000円
- 特定障害者特別給付費:10,000円
- 収入合計:94,308円
- 家賃(補助後):15,000円(30,000円-10,000円-5,000円)
- 食費:32,000円
- 光熱水費:12,000円
- 日用品等:8,000円
- 支出合計:67,000円
収支:+27,308円で、医療費や娯楽費も確保できます。
※自治体助成がない地域では家賃負担が20,000円となり、収支は+22,308円となります
Q: 親の所得が高くても家賃補助は受けられますか?
A: 基本的には受けられます。
特定障害者特別給付費の所得判定は本人と配偶者のみが対象で、親の所得は関係ありません(別世帯の場合)。ただし、以下の点に注意が必要です:
- グループホーム入居時に住民票を移すこと
- 扶養関係を整理すること
- 生計が別であることを明確にすること
Q: 就労収入が増えると補助が減りますか?
A: 直接的な影響は限定的ですが、注意点があります:
特定障害者特別給付費
- 就労収入の増加では支給停止にならない
- 市町村民税課税となった場合のみ停止
- 年収100万円程度までは非課税の場合が多い
その他制度
- 医療費助成等で所得制限がある制度もあり
- 障害年金の支給停止基準もあり
- 総合的な収入バランスの確認が必要
まとめ:安心できる経済基盤の構築
障がい者グループホームの利用費用は、各種制度を適切に活用することで大幅に軽減できます。重要なのは以下の点です:
制度活用のポイント
- 国と自治体の制度を重複活用
- 申請手続きの確実な実施
- 定期的な制度見直しへの対応
- 専門家との連携による最適化
長期的な視点
- 収入源の多様化と安定化
- 支出の効率化と計画性
- 緊急時対応資金の確保
- 家族との適切な支援関係
情報収集の継続
- 制度改正への迅速な対応
- 新制度の積極的な活用
- 地域資源の効果的な利用
- 当事者同士の情報共有
経済的な不安を解消することで、お子さんもご家族も安心してグループホーム生活を始めることができます。分からないことがあれば、遠慮なく市町村や相談支援事業所に相談してください。
次回の記事では、グループホームでの実際の生活の流れと余暇活動について詳しく解説します。
参考資料・データ出典
主要な参考資料
政府・行政機関
- 厚生労働省:「障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービス等の事業等の人員、設備及び運営に関する基準」
- 厚生労働省:「令和7年度の年金額改定について」(2025年1月発表)
- 厚生労働省:「特定障害者特別給付費に関する通知」
- 各市町村:障害福祉サービスに係る利用者負担等について
- 日本年金機構:「障害基礎年金・障害厚生年金の支給額」
統計データ出典
- 費用相場データ:全国グループホーム事業者連絡協議会調査(2024年版)
- 地域別費用差:各都道府県障害福祉課調査資料
- 利用者負担実態:厚生労働省「障害福祉サービス等利用状況調査」
- 自治体助成制度:各市町村公式ホームページ掲載情報(2025年1月現在)
専門機関・業界団体
- 全国社会福祉協議会:共同生活援助事業運営の手引き
- 日本知的障害者福祉協会:グループホーム利用者負担調査
- 全国手をつなぐ育成会連合会:グループホーム費用に関する実態調査
- 日本相談支援専門員協会:経済的支援制度活用マニュアル
データの信頼性について
- 費用データの地域差:記載した費用は全国的な相場であり、地域により大きく異なる場合があります
- 自治体制度の変動性:各自治体の助成制度は財政状況により変更される可能性があります
- 制度改正の影響:障害福祉制度は随時改正されるため、最新情報は各自治体で確認してください
- 事業所による差異:同じ地域でも事業所により費用設定は異なります
- 個人状況の影響:障害支援区分や所得状況により実際の負担額は変わります
最新情報の確認方法
- 制度情報:厚生労働省ホームページ「障害福祉サービス等」
- 年金額:日本年金機構「障害年金の支給額」
- 地域制度:各市区町村の障害福祉課ホームページ
- 事業所情報:WAM NET(福祉・保健・医療の総合情報サイト)
- 専門相談:基幹相談支援センター、指定特定相談支援事業所
重要な免責事項
- 情報の時点性:本記事は2025年1月時点の情報に基づいており、制度改正により内容が変更される可能性があります
- 個別相談の必要性:具体的な費用や制度利用については、必ず市町村や相談支援専門員にご相談ください
- 地域差の考慮:自治体により運用が大きく異なるため、お住まいの地域の最新情報を必ず確認してください
- 事業所選択の責任:実際の費用や条件は事業所により異なるため、複数の事業所を比較検討してください
- 収支計算の個人差:記載した収支例は参考例であり、個人の状況により大きく異なります
- 制度利用の条件:各種制度には詳細な要件があるため、利用前に必ず確認手続きを行ってください
最終更新:2025年1月
本記事は2025年1月時点での制度・統計情報に基づいて作成されています。障害福祉制度や年金額は継続的に改正・改定されるため、実際の利用検討時には必ず最新の公的情報をご確認ください。また、個別の状況に応じた詳細な相談については、相談支援専門員や各種専門機関にご相談されることを強くお勧めします。
障がい者グループホーム
運営アドバイス
東京での運営経験を活かして、グループホーム事業のお悩みにお答えします
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お答えできること
開設準備の相談
開設に向けて準備すべきことや注意点をアドバイス
運営体制の相談
人員配置や業務分担について経験談をお話します
運営上の悩み相談
日々の運営で困ったことについてお話をお聞きします
経験談の共有
5年間の実務で学んだことをお伝えできます
大城 廷寛
グループホーム運営コンサルタント
東京都でグループホーム5年間運営
管理者・世話人・夜間職員
サービス管理責任者補助
申請〜運営まで一貫して従事